沖縄における麹の歴史と食文化

沖縄における麹の歴史と食文化

はじめに

青い海と照りつける太陽。日本の南国沖縄は、豊かな自然環境と独自の文化を持つ地域でもあり、食文化も独自に根付き発展をしてきました。その中で、今回は沖縄における発酵食品の文化について書いていきたいと思います。

1. 沖縄における麹の歴史

沖縄の発酵食品文化は、長い歴史を持っています。古代から中世にかけて、琉球王国は中国や東南アジア、日本本土との貿易を通じて、多様な文化や技術を取り入れてきました。この時期に、発酵食品の製造技術も伝わり、沖縄独自の発酵食品文化が形成されたと言われています。

特に泡盛の原料となる黒麹は、沖縄の伝統的な発酵食品の一つとして、古くから重要な役割を果たしてきました。沖縄の気候は温暖で湿潤であり、発酵に適した環境が整っています。しかし一方で一年を通して高温多湿な環境がカビを発生させやすく、本土の気候とは異なる環境下にあることから、先人達は沖縄の環境に適した菌を発見し活用してきたわけです。
世界広しといえど、黒麹菌だけで酒造りを行っていたのは沖縄だけだとも言われています。明治時代後半には黒麹菌を酒造りに使うようになり九州へと広がっていきました。
その後、黒麹の突然変異(アルビノのような存在)である白麹菌が発見され焼酎作りに使われるようになりますが、これはまた別のお話で。

2. 沖縄の伝統的な麹の種類

沖縄では、主に黒麹が利用されています。黒麹以外に大きく3つの麹菌の種類がありこれらの麹は、それぞれ異なる特徴を持ち、さまざまな発酵食品の製造に利用されています。

黒麹
黒麹は、主に泡盛の製造に使われています。クエン酸を出し、雑菌の繁殖を防ぐ効果があるので、気温が高い南の地域での酒造りに向いています。黒麹を使って造られた焼酎は芳醇な香り、主張が強目なキレ、コク、クエン酸由来で辛口になり、疲労回復の効果があるとも言われています。沖縄の食文化と切っても切り離せない存在でもあります。

白麹
白麹は、黒麹の突然変異で焼酎の製造などに使われています。黒麹と同様クエン酸が多いので雑菌の繁殖を防ぎ、白麹の特徴として黒麹よりも糖化能力に優れています。そのため焼酎作りの際に芋の風味を活かした優しくマイルドでスッキリとした味わいが特徴です。

黄麹
黄麹は、甘酒や日本酒、味噌・醤油などの製造に利用されることが多いです。黄麹菌は、糖化力が高く、発酵過程で豊富な糖分を生成します。これにより、甘酒や日本酒の甘みと香りが引き立ちます。黄麹は日本食には欠かせない存在であり、私たちの生活を支えてくれる陰の立役者です。我々、仲宗根糀家が製造しているのもこの黄麹です。
当時、仲宗根糀家が創業した時は黄麹を製造している会社がなくまだまだ浸透していなかったと思います。黄麹に馴染みの薄い沖縄で、糀をなんとか知ってもらい、広めていくのはとても大変で、今でももっと多くの沖縄県民そして県外の皆様に知っていただきたいという想いで活動しています。黄麹がほとんど浸透していなかった頃から、私たちが地道にお客様に知っていただいたこれまでの軌跡についてのお話もまた別の機会でできればと思います。

3. 沖縄の伝統食品と麹

麹は、沖縄の伝統食品の製造に欠かせない存在です。特に、味噌、泡盛などの製造には、麹が重要な役割を果たしています。これらの食品は、沖縄の食文化を支える重要な要素となっており、地元の人々の生活に深く根付いています。

味噌
沖縄では琉球王国の時代から、生活に欠かせない保存食でした。
昔々から受け継がれたお味噌ですが、沖縄には安政年代(1855~1860年・尚泰王時代)の創業以来、味噌醤油造りの技と知恵を現在まで受け継がれている超老舗企業さんがあります。
それは、那覇市首里にお店を構える『有限会社玉那覇味噌醤油』さん。
先日、私たちも工場見学にお伺いさせていただいたのですが、昔ながらの製法を今でも継続されており、職人さんの手仕事を見ると同じ食品製造業者として頭が下がる思いでした。
今ではいろんな味噌屋さんで機械化が進み、かつ流通にのせやすいように酒精などの添加物などを加えて発酵を止めているお味噌も沢山あります。
一方で、玉那覇味噌さんは発酵を止めていない活きたお味噌を販売されている数少ないお味噌屋さんでほぼ手作りで製造されています。酵素を活かすために味噌が呼吸をできるよう空気孔が付けられています。
私たちも、酵素を活かしてお客様にお届けしたいという想いから全て冷凍で商品を販売しています。流通に乗りやすくするには、乾燥させたり、火を通したり、添加物を入れて発酵を止めることで常温販売をする選択を選ぶわけですが、あえてコストのかかる方法で商品を製造していたりするのが、玉那覇味噌さんの製造の想いとすごく共感する部分でした。
だからこそ、こんな素敵な味噌屋さんがこの先も残り続けて欲しいと心から思うわけです。

玉那覇味噌さんの商品をいくつか勝手に紹介させていただきますので、
是非今度お味噌を購入される際は、玉那覇味噌さんのお店を購入して想いのこもった商品をお試しいただければ嬉しく思います。

 

【玉那覇味噌さんのホームページ】
https://www.tamanahamiso.co.jp/

▶︎王朝みそ

王朝みそ 700g

 

丸大豆を麦と米の麹で仕込んでいる合わせ味噌です。沖縄の塩も入っていて、香りが豊かなのが特徴です。

▶︎首里みそ

首里みそ 700g

麹を使った味噌で、甘さとまろやかさがあるのが特徴です。沖縄の郷土料理「アンダンスー」を作るのにもおすすめです。

泡盛

泡盛は、沖縄を代表する伝統的な蒸留酒であり、その製造には黒麹が欠かせません。黒麹のクエン酸生成による雑菌抑制効果により、泡盛の品質が安定し、長期間保存が可能となります。泡盛は、独特のフルーティーな香りとスムーズな飲み口が特徴で、いまでは沖縄だけでなく全国的にも人気が出ている沖縄を代表するお酒です。

4. 沖縄の麹文化と現代の健康志向

沖縄では、伝統的な麹を使った発酵食品が再評価され、健康志向の高まりとともに人気が再燃しています。沖縄を代表する黒麹以外でも、我々が作っている黄麹には、豊富な栄養素が含まれており、免疫力の向上や消化機能の改善、抗酸化作用など、さまざまな健康効果が期待されています。

麹の健康効果
麹には、ビタミンB群やアミノ酸、ミネラルなどが豊富に含まれており、これらの栄養素が体の健康をサポートします。特に、ビタミンB群はエネルギー代謝を助け、疲労回復やストレス軽減に効果があります。また、アミノ酸は、筋肉の修復や免疫力の向上に寄与します。

さらに、麹には抗酸化作用を持つ成分が多く含まれており、体内の活性酸素を中和する働きがあります。これにより、細胞の老化を防ぎ、生活習慣病の予防に効果が期待されます。現代の健康志向に合った食品として、麹を使った発酵食品は注目されています。

我々、仲宗根糀家が創業した頃はまだ黄麹を製造している会社は沖縄にありませんでした。そのため、今でもまだ黄麹関連の商品に対して県内の方々の認知が広まっていないという実感があります。例えば、試飲会などをやっていても「甘酒ってアルコールが入っているから飲めない」「麹ってよくわからない」などの声をいただくことが多いと感じています。
この意味で、まだまだ沖縄における麹の可能性は大きいと感じています。
まだ麹の魅力に出会っていない人たちが多ければ多いほど、麹で生活や人生が豊かになる可能性を秘めた人たちが潜在的に眠っているということの裏返しだと前向きに捉えています。

仲宗根糀家では、発酵の知識や麹調味料の作り方などを広く情報開示しています。
仲宗根糀家の講座(知っとこ会)を受講された方が、ご自身で麹の料理教室をひらいたり、甘酒のお店を作ったりされています。
競合が増えるから、情報を開示しないほうがいいんじゃないかと言われることも多々あります。
しかし、私たちの考え方は逆です。
競合ではなく、沖縄で麹を広めてくれる仲間が増えていると捉えていて、みんなが沖縄で麹の魅了を広げるパートナーだと信じています。

我々の一つの大きな目標は、沖縄の、そして全国の方々の健康寿命を伸ばすことです。この目標を達成するためには、我々だけでなく多くの仲間と一緒に達成することが、早くそして確実な近道だと思っています。

この記事を読んでくださっている皆様もその一員になってくだされば大変嬉しく思います。

まとめ

沖縄の伝統食品としての麹は、長い歴史と豊かな文化を持ち、地元の食文化に深く根付いています。白麹、黒麹、黄麹の三種類の麹が、それぞれ異なる特徴を持ち、さまざまな発酵食品の製造に利用されています。特に、味噌、泡盛の製造には、麹が重要な役割を果たしており、これらの食品は沖縄の食文化を支える重要な要素です。

現代においても、麹の健康効果が再評価され、健康志向の高まりとともに人気が再燃しています。沖縄の豊かな自然環境と独自の文化に育まれた麹の魅力を、麹製造に関わるものとしてこれからも発信し続けていこうと思います。

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