沖縄の島豆腐とあちこーこー豆腐|熱々のソウルフードと、消えゆく町の豆腐屋

沖縄の島豆腐とあちこーこー豆腐|熱々のソウルフードと、消えゆく町の豆腐屋

沖縄で「豆腐」といえば、大きくてずっしりした島豆腐のこと。そして、炊きあがったばかりの豆腐を湯気の立つ温かいまま売る「あちこーこー豆腐」は、県民に長く親しまれてきたソウルフードです。ところが今、その温かい豆腐の文化が静かに減りつつあると報じられています。この記事では、那覇の糀屋が、島豆腐とあちこーこーの魅力、そしてなぜ町の豆腐屋が姿を消しつつあるのかを、やさしくひもといていきます。

島豆腐とは——沖縄のソウルフード

島豆腐は、沖縄で古くから親しまれてきた伝統的な豆腐です。本土の絹ごし豆腐や木綿豆腐と比べると、一丁がぐっと大きく、水気が少なくてずっしり。箸でつかんでも崩れにくい、しっかりとした食感が特徴とされます。塩気をほんのり含んだ味わいで、そのまま食べても、炒め物にしても存在感があります。

沖縄の食卓に、島豆腐は欠かせません。ゴーヤーチャンプルーをはじめとする「チャンプルー(炒め物)」に、汁物に、そして固まる前のふわふわを味わう「ゆし豆腐」に。日々の料理のあちこちに顔を出します。沖縄は豆腐の消費量が全国でもトップクラスで、全国でいちばん多いと報じられることもあるほど、県民の暮らしに深く根づいた食材です。

※ 島豆腐を米麹・紅麹・泡盛で漬け込んだ発酵食品「豆腐よう」も、この島豆腐からつくられます。豆腐ようについては別の記事で詳しくご紹介します。

あちこーこー=熱々のごちそう文化

「あちこーこー」は、うちなーぐち(沖縄の言葉)で「熱々・できたて」を意味します。作りたての温かい島豆腐を、冷やさずにその日のうちに温かいまま売る——これは沖縄独特の豆腐文化で、県民に長く親しまれてきました。

早朝に炊きあがった豆腐が、湯気を立てながら店先に並ぶ。それを温かいまま持ち帰り、湯気の残るうちに口に運ぶ。ほんのり温かい島豆腐は、それだけで立派なごちそうです。冷たい豆腐にはない、やわらかな大豆の香りとほくほくした口あたりは、できたてならでは。沖縄の人にとって「あちこーこー」は、豆腐のいちばんおいしい食べ方として体にしみついた言葉なのです。

なぜ減っている?衛生基準の厳格化(2021年〜)と背景

県民に愛されてきたあちこーこー豆腐ですが、近ごろ店頭で見かける機会が以前より減っていると言われています。背景のひとつが、衛生基準の厳格化です。

2021年6月1日に改正食品衛生法が施行され、原則すべての食品事業者にHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が義務づけられました。温かいまま売るあちこーこー豆腐は、たとえば豆腐を55度以上に保つか、下回った場合はおおむね3時間以内に売り切る、といった厳しい温度・時間の管理が求められるようになったとされます(セレウス菌などのリスクへの対策とされています)。

この基準への対応は、家族経営のような小規模の豆腐屋にとって、決してやさしいものではありません。設備や手間の負担から廃業や生産量の縮小が相次いだと報じられ、結果として、店頭に並ぶあちこーこー豆腐が以前より少なくなっているのです。さらに近年は大豆価格の高騰も追い打ちをかけていると言われ、町の豆腐屋を取り巻く環境は、いっそう厳しさを増しています。

規制との長い歴史——本土復帰と「豆腐ロード」

実は、あちこーこー豆腐が規制と向き合うのは、今回が初めてではありません。温かい豆腐の文化は、これまでにも何度か大きな岐路をくぐり抜けてきました。

大きな転機のひとつが、1972年の本土復帰です。本土の食品衛生法が沖縄にも適用されるようになり、島豆腐を水にさらして売ることが求められるようになったと言われています。温かいまま売るという昔ながらのやり方が難しくなり、それに対応しきれず、多くの町の豆腐屋が姿を消したという経緯が伝えられています。

かつて那覇の栄町市場には、豆腐屋が軒を連ね「豆腐ロード」と呼ばれた一角もあったと言われています。温かい豆腐を求める人と、それをつくる作り手が行き交う、活気ある風景がそこにはありました。あちこーこー豆腐の歴史は、こうした規制との綱引きを幾度もくぐり抜けてきた、粘り強い文化の歴史でもあるのです。

温かい島豆腐の楽しみ方——糀屋の一皿

もし温かい島豆腐が手に入ったら、まずはそのまま味わってみてください。湯気の立つ豆腐に、少しの塩や、かつおだしをかけるだけで十分にごちそうになります。冷奴ならぬ、あたたかい「温奴(あつやっこ)」です。

同じ発酵を生業とする糀屋から、ひと皿だけご提案を。温かい島豆腐に、生塩こうじを小さじ一杯ほどのせてみてください。米糀と塩だけでつくる生塩こうじの、角のとれたまろやかな塩気とうま味が、島豆腐の素朴な大豆の風味にすっと寄り添います。醤油とはまた違う、やさしい味わいです。わたしたち仲宗根糀家の生塩こうじは、添加物を一切使わない無添加で、火入れ(加熱殺菌)をしていない「生(非加熱)」の状態でお届けしています。温かい豆腐にのせる一皿から、沖縄の発酵の楽しみが少し広がればうれしいです。

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よくある質問

Q. 島豆腐とふつうの豆腐は何が違いますか?

A. 島豆腐は沖縄の伝統的な豆腐で、本土の絹ごし・木綿豆腐に比べて一丁が大きく、水気が少なくてしっかりした食感が特徴とされます。ほんのり塩気を含み、そのままでも炒め物でも存在感があります。沖縄の食卓に欠かせないソウルフードです。

Q. 「あちこーこー」ってどういう意味ですか?

A. うちなーぐち(沖縄の言葉)で「熱々・できたて」という意味です。作りたての島豆腐を冷やさず温かいまま売る沖縄独特の文化を「あちこーこー豆腐」と呼び、県民に長く親しまれてきました。

Q. あちこーこー豆腐が減っているのはなぜですか?

A. 2021年施行の改正食品衛生法でHACCPに沿った衛生管理が義務化され、温かいまま売るには豆腐を55度以上に保つ、下回れば概ね3時間以内に売り切るといった厳しい温度・時間管理が求められるようになったとされます。この対応が難しい小規模の豆腐屋の廃業や、大豆価格の高騰などが背景にあると報じられています。

Q. 温かい島豆腐はどう食べるのがおすすめですか?

A. まずは温かいうちにそのまま、少しの塩やかつおだしで味わうのが定番です。発酵好きの方には、生塩こうじを小さじ一杯ほどのせる食べ方もおすすめ。まろやかな塩気とうま味が加わり、島豆腐の大豆の風味に寄り添います。

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