味噌や醤油、甘酒づくりに欠かせない「こうじ(麹)」。じつは、こうじに使われる「こうじ菌」には黄麹(きこうじ)・黒麹(くろこうじ)・白麹(しろこうじ)といった種類があります。沖縄は泡盛づくりの「黒麹」文化が根づいた土地。そんな沖縄で、私たち仲宗根糀家はあえて食用の「黄麹」をつくり続けています。3つのこうじ菌の違いと、沖縄で黄麹をつくる理由をやさしくご紹介します。
そもそも「こうじ(麹)」とは
こうじとは、蒸した米や麦、大豆などにこうじ菌(コウジカビ)を繁殖させたものです。こうじ菌は目に見えない小さな微生物で、でんぷんを甘み(ブドウ糖)に、たんぱく質を旨み(アミノ酸)に変えるさまざまな酵素を生み出します。
この酵素の働きこそが、和食のおいしさの土台です。米こうじから甘酒や塩こうじが、大豆と組み合わせれば味噌や醤油が、米と組み合わせれば日本酒が生まれます。日本人は古くから、目に見えない菌の力を上手に借りながら、独自の発酵文化を育ててきました。そして、このこうじ菌が「黄麹」「黒麹」「白麹」と呼び分けられているのです。
黄麹・黒麹・白麹の違い早わかり表
| 種類 | 代表的な用途 | 主な持ち味 |
|---|---|---|
| 黄麹 | 味噌・醤油・日本酒・米こうじ・甘酒・塩こうじ | 日本の食卓を支える基本のこうじ。甘みと旨みを引き出す |
| 黒麹 | 泡盛・焼酎 | クエン酸を多く生み、もろみが傷みにくい。南国の酒づくり向き |
| 白麹 | 焼酎 | 黒麹から生まれた仲間。すっきりまろやかな味わい |
※用途は代表的な一例です。同じこうじ菌でも、つくり手や原料によって仕上がりは変わります。
黄麹(きこうじ)
黄麹は、味噌・醤油・日本酒・甘酒など、日本の食文化を支えてきた基本のこうじです。胞子が黄緑がかった色をしていることから、こう呼ばれます。学術的には「ニホンコウジカビ」と呼ばれ、日本醸造学会によって日本の「国菌(こくきん)」に選定されているほど、和食に深く根ざした存在です。ご家庭で使う米こうじや甘酒、塩こうじ、醤油こうじは、いずれもこの黄麹からつくられます。
黒麹(くろこうじ)
黒麹は、沖縄の泡盛や本格焼酎づくりに使われるこうじです。胞子が黒っぽい色をしているのが名前の由来。最大の特徴は、発酵の過程でクエン酸をたくさん生み出すこと。クエン酸はもろみ(仕込み中の液体)を酸性に保ち、雑菌が増えにくい環境をつくります。気温が高く菌が活発になりやすい沖縄では、この性質が酒づくりの強い味方になりました。
白麹(しろこうじ)
白麹は、黒麹から生まれた仲間にあたるこうじで、主に焼酎づくりに使われます。黒麹と同じようにクエン酸を生みながらも、色が白っぽく、扱いやすいのが特徴。仕上がりは比較的すっきりとまろやかな味わいになるとされ、現在の焼酎づくりで広く使われています。
なぜ沖縄は「黒麹」文化が主流なのか
沖縄を代表するお酒といえば泡盛。その泡盛づくりに欠かせないのが黒麹です。黒麹はクエン酸を多く生み、高温多湿の沖縄でも仕込みが安定しやすいという利点があります。南国の気候と黒麹の相性の良さ。この組み合わせが、沖縄を「黒麹の島」として育ててきました。そのため、沖縄でこうじといえば、まず泡盛用の黒麹を思い浮かべる方も少なくありません。
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それでも、私たちが「黄麹」をつくる理由
黒麹文化が根づいた沖縄で、仲宗根糀家は食用の黄麹をつくり続けています。沖縄県内では、黄麹を専門につくる作り手はとても希少です。私たちは、その「沖縄で黄麹製造のパイオニア」として歩んできました。
なぜ、あえて黄麹なのか。理由はシンプルです。甘酒や味噌、塩こうじといった毎日の食卓の発酵食品は、黄麹からしか生まれないからです。泡盛が沖縄の食文化を彩ってきたように、食べるこうじもまた、沖縄の暮らしを豊かにしてくれる存在だと考えています。
私たちが大切にしている3つのこだわり
- 県産・国産の原材料を使う:米こうじは国産米、塩こうじは沖縄の海塩を使っています。
- 火入れをせず、添加物を一切加えない:酵素が活きた「生」の状態のままお届けします。
- 冷凍で販売する:低温では酵素が休眠し、常温に近づくと再び目を覚まします。新鮮さを保つための選び方です。
沖縄の伝統的な糀・発酵文化を次の世代へつないでいくこと。それが、黒麹の島で黄麹をつくる私たちの役目だと思っています。
黄麹からつくられる、毎日の発酵食品
黄麹は、ご家庭でいちばん身近に使えるこうじです。仲宗根糀家では、黄麹を活かした商品をご用意しています。
- 生米こうじ:国産米100%、乾燥させない生のこうじ。甘酒や味噌、塩こうじづくりの土台になります。
- 酵素甘糀(甘こうじ):非加熱・砂糖不使用で2日間じっくり発酵させた甘酒。米と糀の自然な甘さが楽しめ、古くから親しまれてきた一杯です。
- 生塩こうじ・生醤油こうじ:黄麹の旨みを活かした、非加熱・無添加の調味料です。
よくある質問
Q. 黄麹と黒麹は、どちらが体にいいのですか?
A. どちらも昔から親しまれてきた発酵食品の仲間で、優劣をつけられるものではありません。用途が異なり、黄麹は味噌・甘酒・塩こうじなどの食品づくりに、黒麹は泡盛などの酒づくりに向いています。目的に合わせて選ぶのがおすすめです。
Q. 家庭の料理に使うなら、どのこうじですか?
A. 甘酒や塩こうじ、味噌づくりなど、ご家庭の料理に使うのは黄麹です。スーパーや当店で手に入る「米こうじ」「甘酒」「塩こうじ」は、基本的に黄麹からつくられています。
甘酒がなかなか甘くならないときは?
甘みを引き出す酵素は55~60℃でよく働きます。温度が低いと甘みが出るまで時間がかかるので、炊飯器の保温機能や温度計で温度を保ちながら6~8時間ほど様子を見てください。
温度計や炊飯器がなくても甘酒は作れますか?
作れます。魔法瓶やヨーグルトメーカーでも代用できます。お湯を沸かして保温容器に入れ、麹と同量くらいのお湯を加えてふたを閉め、時々様子を見ながら発酵させれば大丈夫です。
塩こうじが思ったより固くなってしまいました。
発酵が進んで水分が抜けた状態なので心配いりません。ひたひたになるくらいまで水を少しずつ足して混ぜ、数日置くと元のとろみに戻ります。
逆に塩こうじがゆるく水っぽくなりました。
水分と麹のバランスが崩れているだけなので心配いりません。米こうじを少量ずつ足して数日置くと、とろみが戻ります。
材料の分量を半分にして作ってもいいですか?
問題ありません。米こうじ・塩・水などの材料をすべて同じ比率で半分にすれば、発酵にかかる時間も仕上がりの味もそのまま変わりません。
米こうじの代わりにもち米でつくったこうじでも大丈夫ですか?
もち米でこうじをつくることもできますが、うるち米に比べて粘りが強く、仕上がりがもったりしやすい傾向があります。甘酒には、うるち米の生米こうじのほうが扱いやすいです。
甘酒や塩こうじは、どのくらいでできあがりますか?
甘酒は6~8時間ほどで飲み頃になります。塩こうじは常温で1週間~10日ほど、1日1回混ぜながら発酵させると、とろりとして麹の粒がやわらかくなります。
使いかけの生米こうじは、どう保存すればいいですか?
使う分だけ取り分けたら、残りは早めに冷凍庫へ。冷蔵のまま置いておくと発酵が進んでしまうので、使い切るまで日数がかかる場合は冷凍が安心です。
味噌づくりに使うとき、生こうじと乾燥こうじで気をつけることは?
生こうじは水分を含んでいる分、仕込みに使う塩や水の量をやや控えめに調整します。分量の目安は本文の「生の米こうじと乾燥米こうじのちがい」でご紹介しています。
甘酒の粒感が気になるときは?
そのまま楽しめますが、粒の食感が気になる場合はブレンダーで撹拌するか、目の細かいざるでこすと、なめらかな口当たりになります。
塩こうじや醤油こうじづくりに、専用の容器は必要ですか?
特別な容器は不要です。清潔な保存容器やジップ付き保存袋でも作れます。ふたを密閉しすぎず、少し空気の通り道を残すと発酵がスムーズに進みます。
Q. 黄麹で泡盛はつくれますか?
A. 泡盛は黒麹を使うのが伝統的な製法で、黄麹は主に味噌・醤油・甘酒など食品づくりに使われます。それぞれのこうじが、得意な分野で力を発揮します。
あわせて読みたい:甘酒の飲み方ガイド/塩こうじの使い方完全ガイド
この記事の塩こうじ、あと29品の使い道があります
沖縄・那覇の糀屋がえらんだ生塩こうじの30品を、PDFでお送りします。材料・作り方・コツ・調理時間・カロリー・塩分まで入った、30品ぶんのレシピ集です。無料です。
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生の米こうじと乾燥米こうじのちがい
生の米こうじは、蒸した米に水分がしっかり残った状態のこうじです。乾燥米こうじは、それを乾燥させて水分を飛ばしたもので、同じ重さでもこうじ菌の密度が高くなります。置き換える目安は「乾燥100gに対して生120g」。たとえば塩こうじを仕込むとき、生の米こうじなら200g・塩60g・水200mlほど、乾燥米こうじなら170g・塩60g・水250mlほどが扱いやすい分量です。乾燥こうじは水分を吸うぶん、仕込みの水をやや多めにするとなじみやすくなります。仲宗根糀家では、酵素の働きが活きた生の米こうじをお届けしています。
うまくいかないときは
| 気づいたこと | なぜそうなるか | どうするか |
|---|---|---|
| 塩こうじの表面に白いふわふわしたものが出た | 発酵中に麹菌そのものが増えた膜で、味噌づくりなどでもよく見られる変化です | そのまま混ぜ込んで使えます。黒や緑、ピンク色の斑点が出た場合は麹菌とは別のものなので、そのときは仕込み直してください |
| 甘酒が思ったより酸っぱい | 発酵の温度が60℃を超えた、または低めの温度で長く置きすぎると、麹以外の菌も働きやすくなります | 次回は炊飯器の保温機能や温度計で55~60℃を保ってみてください。できたものは加熱してから料理の調味料として使うと扱いやすいです |
| 生米こうじが乾いてパラパラになった | 冷蔵庫の中で少しずつ水分が抜けていくために起こります | 使う前に大さじ1~2杯ほどの水を振りかけてなじませると、しっとりした状態に戻ります |
| 塩こうじや醤油こうじの発酵がなかなか進まない | 気温が低い時期は、麹菌の働きがゆっくりになります | 冬場は日数がかかるのが普通です。1日1回混ぜながら、とろみが出るまで気長に待ってください |
| 甘酒にツンとしたにおいがある | 発酵が進みすぎたか、清潔でない道具から別の発酵が始まっていることがあります | 香りが強く出ている場合は口にしないほうが安心です。次の仕込みは清潔な道具と55~60℃の温度管理からやり直してみてください |
保存の目安
生の米こうじや甘酒、塩こうじは、冷蔵庫なら1~2週間ほどで食べきるのがちょうど良い目安です。日がたつほど発酵がゆっくり進み、風味が変わっていきます。すぐに使い切れないときは冷凍庫へ。酵素は低温で休眠するので、1~2か月ほどは風味を保ったまま保存できます。使う分だけスプーンですくって、残りはそのまま冷凍庫に戻せば大丈夫。自然解凍するか、料理に使う分をそのまま鍋やボウルに入れて溶かしながら使うと扱いやすくなります。



