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けんちん汁の作り方|炒めてから煮る理由と、しょうゆ・味噌の2つの味

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けんちん汁の作り方|炒めてから煮る理由と、しょうゆ・味噌の2つの味

※画像はイメージです

トップ画像は食材・料理を説明するイラストです。実際の調理写真ではありません。

けんちん汁は、大根・にんじん・ごぼうなどの根菜とこんにゃくをごま油で炒めてからだしで煮て、手でくずした豆腐を加える汁物です。肉や魚を使わない精進の汁物で、鎌倉の建長寺にゆかりがあると伝わります。

今回は2人分の配合を一つにそろえ、だし600〜700ml、木綿豆腐150gで作ります。しょうゆ仕立ての基本と味噌のアレンジは区別し、両方の調味料をそのまま重ねないようにします。

なぜ先に炒めるのか、なぜ豆腐を手でくずすのか。那覇市国場で米こうじと糀調味料をつくる仲宗根糀家が、ひとつずつ理由を添えてご案内します。

一杯の味を決める3つのこと

  1. 根菜とこんにゃくは、だしより先にごま油で炒める
  2. 豆腐は水けをきって、手でくずして入れる
  3. しょうゆは香りを残すため、いちばん最後に

糀で仕上げたい日は、最後の塩を生塩こうじに、しょうゆの一部を生醤油こうじに。どちらも3点セットに入っています。

けんちん汁とは|精進の汁物と「建長汁」という名前の由来

農林水産省の「うちの郷土料理」では、けんちん汁は神奈川県(鎌倉)の郷土料理として紹介されています。大根やにんじんなどの野菜を油で炒めてから煮込む料理で、名前の起こりには2つの説があります。中国から伝わった精進料理「普茶(ふちゃ)料理」のひとつ、巻繊(けんちゃん)が日本語になったという説と、鎌倉の建長寺で作られる「建長汁」がいつしか「けんちん汁」と呼ばれるようになったという説です。

建長寺では700年以上も前から食べられ、修行した僧侶が各地へ移るとともに全国へ広まったという話も伝わっています。精進料理なので動物性の食品は使わず、だしは昆布やしいたけからとります。具だくさんなのは、ほかの精進料理で残った野菜の切れ端を無駄なく使ったため。豆腐をくずして入れるのは、修行僧が落としてしまった豆腐を、建長寺の初代住職が拾い集めて洗い、汁に入れたことがきっかけ、という逸話も残っています。

辞典をひもとくと、「巻繊」の「ちん」は「繊」の唐音(中国の発音に由来する読み)です。精選版 日本国語大辞典は「けんちんじる」を冬の季語として載せ、江戸時代の『俚言集覧』(1797年ごろ)の「豆腐牛房芋その外色々時の菜を入て油にて煎て汁の物にする」という一文を引いています。いまの作り方とほとんど変わりません。

一年じゅう作られますが、根菜を使う温かい汁物なので、寒い時期に特に好まれます。関東の一部の地域では、節分や恵比寿講といった季節の行事に合わせて食べられてきました。

けんちん汁の作り方|2人分の材料と手順

基本はNHKエデュケーショナル・清水信子さんの2人分です。豆腐150g、こんにゃく1/3枚、大根100g、にんじん50g、ごぼう50g、ねぎ1/3〜1/2本、だし600〜700ml、ごま油大さじ2、酒大さじ2、塩小さじ1/3、しょうゆ大さじ1、粉ざんしょう少々を用意します。

  1. 豆腐を紙で包み、重しをして約30分水切りし、くずします。こんにゃくはちぎって2〜3分ゆでます。
  2. 大根とにんじんを乱切り、ごぼうは少し小さめに切って水にさらし、ねぎを1cm幅に切ります。
  3. ごま油大さじ1と1/2でこんにゃく・根菜を炒め、豆腐も加えます。
  4. だしを注ぎ、煮立ったら弱火で7〜8分。酒・塩を加え、さらに4〜5分を目安に野菜をやわらかくします。
  5. しょうゆ、ねぎの順に加えて軽く煮立て、ごま油大さじ1/2で仕上げます。

調理は約40分の参考で、水切りは別です。根菜の大きさで変わるため、時間だけで切り上げず固さを確認してください。手元の具を増やしたときは、同じ加熱時間とは限りません。

精進料理として作る場合は昆布や干ししいたけのだしを選び、かつおだしとは区別します。合わせだしの考え方も参考にしてください。顆粒だしに塩分が含まれる場合は、元の塩をそのまま足さず表示を確認します。

おいしさの理由|炒める・くずす・しょうゆは最後に

けんちん汁の手順には、ひとつずつ意味があります。理由がわかると、具材を替えても味が決まりやすくなります。

ひと手間 なぜそうするのか ひとこと
根菜をごま油で炒める 野菜のうまみや甘みを引き出し、コクのある汁に 油が全体になじむまでが目安
豆腐の水けをきり、手でくずす 割れ目から味がほどよくしみる 包丁で切るより味がなじむ
しょうゆは最後に入れる 香りがとばないように 煮立てすぎない
ごぼうを水にさらす。里芋を使う別配合では、その下処理も確認する アクやぬめりを取り、汁が濁りにくくなる 里芋入りは別の配合。基本の2人分には里芋を使わない
こんにゃくをゆでる・から炒りする 水分がとび、味がしみこみやすくなる ちぎると断面が増えて味がからむ

建長寺の紹介には、豆腐を後から加える方法もあります。今回の基本は、豆腐も先に炒める清水さんの方法です。異なる手順を途中で混ぜず、まず一つの作り方で、根菜と豆腐の仕上がりを確かめます。

しょうゆ仕立てと味噌仕立て|豚汁との違いも

けんちん汁の基本はしょうゆと塩の澄ました味ですが、地域や家庭によって味噌で仕立てることもあります。似た汁物と並べると、違いがつかみやすくなります。

汁物 味つけと具 こんなときに
けんちん汁(しょうゆ仕立て) しょうゆ・塩・酒。根菜・こんにゃく・豆腐 根菜の甘みと香りを味わいたい日
けんちん汁(味噌仕立て) 塩・しょうゆを控え、味噌を少量ずつ溶かして味を調整 冷える日に、こっくりした味で
つけけんちん(茨城県) 温かいけんちん汁に、ざるそばをつけて食べる そばと合わせて一食にしたい日
豚汁 豚肉を入れ、味噌で仕立てる 肉のうまみも一緒にとりたい日

茨城県の「つけけんちん」は、根菜がよくとれる土地でけんちん汁にそばをつけて食べるようになった郷土料理で、農林水産省の資料では赤味噌で仕立て、好みで味噌としょうゆを半々にしてもよいとされています。日本大百科全書によると、関東のけんちん汁には油揚げを入れるのが決まりごとのようになっていたそうです。

精進のけんちん汁に対して、豚汁は豚肉を入れる別の料理です。豚肉に塩こうじで下味をつける作り方は塩麹豚汁の作り方でご紹介しています。

糀で仕上げるなら|塩こうじ・醤油こうじの加え方

精進のけんちん汁は、うま味を昆布やしいたけ、野菜からとる汁物です。仲宗根糀家の生塩こうじは原材料が米糀と食塩だけで、スープの塩代わりとしても使えます。仕上げの塩味を、ここで替えてみてください。

  • 塩こうじ:レシピの塩を一度に置き換えず、少しずつ溶かして味見を。
  • 醤油こうじ:しょうゆの一部を生醤油こうじに。まろやかなうま味とやさしい甘みが加わります。
  • 入れるタイミング:どちらも火を止める直前に。煮立て続けないことで、香りも残ります。

汁物に塩こうじを使う考え方は塩麹スープの作り方、2つの調味料の性格の違いは塩麹と醤油麹の違いで詳しくご紹介しています。

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うまくいかないときの直し方と、うどん・そばへのアレンジ

具の多い汁物は、下ごしらえと火加減で仕上がりが変わります。仕上がりに引っかかりがあれば、下の表で原因と次の一手を。

気になること 考えられること 次はこうする
汁がぬめる・濁る 里芋を加える別配合で、下処理が不十分だった 皮をむいたら塩でもみ洗いしてから使う
味がぼやける 豆腐の水けが残った 水きりをしてから、くずして入れる
野菜がかたい 煮る時間が短い 弱火で、竹串がすっと通るまで煮る
香りが弱い しょうゆを早く入れた しょうゆや糀調味料は火を止める直前に
豆腐がくずれすぎる 豆腐を入れてから強く煮立てた 豆腐を入れたら弱火にする

残ったけんちん汁は、ゆでたうどんを加えれば「けんちんうどん」、そばなら「けんちんそば」に。うどんを糀の調味料で味わうなら醤油麹うどんの作り方もどうぞ。汁物を軸にした献立づくりは一汁二菜の献立例が参考になります。

塩こうじ・醤油こうじはどこで買える?

仲宗根糀家の生塩こうじと生醤油こうじは、オンラインショップでご注文いただけます。仕上げた調味料を加熱殺菌せずに冷凍でお届けするので、冬の汁物の仕上げにも、使う分だけすぐ取り出せます。県内では、冷凍の棚に並べている取扱店もあります。品揃えは店舗によって異なるので、出かける前に公式の販売店一覧をご確認ください。

仲宗根糀家は、沖縄に黄麹を製造する会社がなかった頃から、手探りで麹づくりを続けてきました。いまも那覇市国場で米こうじを仕込み、塩こうじや醤油こうじに仕上げています。沖縄の塩麹、塩麹の販売場所と選び方も参考にしてください。

けんちん汁のよくある質問

Q. けんちん汁と豚汁は、何が違いますか?

A. けんちん汁は精進料理なので肉や魚を使わず、だしも昆布やしいたけからとります。豚汁は豚肉を入れて味噌で仕立てる、別の汁物です。

Q. 豆腐の水きりは、省いてもかまいませんか?

A. 今回は紙で包み、重しをして約30分水切りします。電子レンジへ替えるなら豆腐の量・出力・容器を指定した方法が必要で、一律2分とは扱いません。

Q. 糀調味料で仕上げてみたいとき、まず何から試せばいいですか?

A. いつもどおりに作り、最後の塩の一部を生塩こうじに替えるところから。少しずつ溶かして味見をし、次はしょうゆの一部を生醤油こうじに替えてみてください。

Q. けんちん汁用に生塩こうじ・生醤油こうじを買ったら、保存はどうすればいいですか?

A. 生塩こうじ・生醤油こうじは届いたら冷凍庫へ。開封後も冷凍保存し、清潔な器具で使う分を取り出します。商品の表示と期限を確認してください。

参考情報

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